レジェンドストーリー

STORY.76
2017年下半期レジェンドストーリー銀賞O.S
平成29年10月度 ASA千歳船橋

新人で入社したての私が、初めて単独でのセールスを許された日、お昼から軒並み訪問し始めて3時間くらい、初セールスの私は、新聞営業の厳しい洗礼をこの身に一身に受け、気持ちがくじけ始めた頃でした。

そこは、きれいに区画整理された住宅街の一画、小さなお子さんが遊び始めた午後4時頃、道路の真ん中で区域地図を見ていた私の後ろで、強く握った自転車のブレーキ音が聞こえたのです。
すかさず振り返ってみると、奥様と思われる若い女性が家の前に自転車をとめるところでした。私は緊張しながらも『あの、すみません』と声を押し出すように話しかけてみました。すると彼女はまるで漁師がいま揚がったばかりの大きな魚を船に放るように、自転車にまたがったままランドセルを玄関まで一気に放り投げると、私の方を振り返ることものなく『今忙しいのよ!!!』と一喝!
『はい、すみません』と何とか返した私に奥様は、少し横柄だったと反省してくれたのか、立ち去りながら『30分で戻るから!!』と私に言い放つと常人の自転車をこぐ速度の、ゆうに倍はあるかと思われる速さで、一気に走り去って行ってしまった。
その日私が出会った事柄の中で、一番強烈で、そして一番短いインパクトに気圧されながらも、もう一度チャンスをもらえたらしいということだけは感じ取れたので、しばらくそのあたりのお宅を訪問しながら、はやる気持ちを抑えて待つことにした。
そして、30分が経過するよりも早く、私は先ほどのお宅の方に歩みを進めていくと、本当に30分が過ぎたころだろうか、彼女は戻ってきたのです。あたりはちょうど夕焼け時にさしかかり、柔らかな西日が差し込む何とも言い難い温かみを感じる頃です。
そして、彼女は、先ほどとは打って変わって優しい微笑みを浮かべご近所の子供たちと話している。夕焼けに映し出されたその光景は、何とも美しく、また、ほんの一瞬のはずのその時間は、とても長く、ゆっくり時間が流れているかのようでした。彼女が家の中に入るのを確認し、私は意を決してインターフォン
を押したのです。すると『はーい』と何も聞かずに家の扉が開き、中から先ほどの奥様が出てこられたのです。
そして『あー、さっきはごめんなさい』『で、なんですか?』とおっしゃいましたので、少し緊張しながら『あ、朝日新聞の・・』と私がいうと『な~んだ新聞屋さんか』『はい、そうなんですけど、そうおっしゃらずに』といいました。

その後覚えていることは、私が必死に話し続けたこと、それをスローモーションのようにもう一人の自分が見ていた感覚だけで、話の内容は全くと言っていいほど伝わってなかったと思う。

どれくらい話し続けていたのだろうか、やがて奥様は微笑みながらこう言ったのです。

『わかりました、新聞とりますよ、どうすればいいですか?』

一瞬本当に天使に見えた。

その言葉で我に返った私の言葉は止まり、慌ててお礼を言い、契約書を書いたのでした。

販売店に戻った私のその契約書は不備だらけ。しかしその奥様は電話確認の時一言の文句も言わず、一つ一つの問いに答えていただいたとのことでした。

3ヶ月、起こし。

宮越主任に書類不備を注意されながらも、固く握手をしてもらった時に、やっと初契約を頂くことができた実感とうれしさがこみ上げてきて、ふと、先ほどの奥様に『頑張ってください!』と最後に言われた一言を思い出した。

この日あった、この人、このお客様のおかげで、私は今日もここにいて、叩いていられる。そういっても決して過言ではない、初契約を取るのに必死だった私に本当に天使が舞い降りた、そんなある夕暮れ時の物語です。

ありがとうございます。



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