レジェンドストーリー

STORY.53
2015年上半期レジェンドストーリー特別賞I.H
平成27年2月度 ASA瑞穂

その日はまだ肌寒い2月20日のことです。20日は一ヶ月の締め日であり、営業マンにとって締め日はその月の出来事が確定する神聖な日です。
私は格別な思いを胸に、いつものように軒並み訪問を開始しました。
しかし1件また1件と訪問をするのですが一向にお話しを聞いていただけるお宅に出会うことはなく、訪問開始から数時間が経過していました。少し気持ちも焦り始めた頃、そのお宅に出会ったのです。私がインターフォンを押し、訪問の理由を告げるとその奥様はドアを開けて出てきてくれました。
そして奥様は『うちは読売よ』とおっしゃいます。私が『普段どのようなサービスをされていますか?』とお伺いすると、なんとそのお宅にはどういうわけか新聞代金が無料で配達されているそうなのです。
私は内心『うわーさすがにこれは無理だな。無料では戦いようがない』と思いました。しかし、数時間訪問を続けてやっとドアを開け話しを聞いていただけた奥様です。私が途方にくれていると、その優しそうな奥様は『近くに妹がいるのよ、そこに受験生がいるからもしかしたらとってくれるかもよ!』とおっしゃいます。私は『ほんとですか?ありがとうございます、今すぐ伺います!』と、うれしくなった私はそのお宅に飛んでいきました。しかし、電気はついているのですがいらっしゃらないご様子です。私は『まずいな』と思いながら、すぐに先ほどの奥様のところに向かいました。すると、家の前に車が停まっているではありませんか、この短時間にお客様がいらっしゃったようです。私は『今はやめたほうがよさそうだな』と思いました。それまでの時間でいまだゼロの状態で、さらに残り時間はあと30分くらいしかありません。

私は気持ちを切り替えすぐさま別のお宅を訪問しました。そして少し時間をずらしてから、先ほどのお宅にもう一度訪問してみました。
すると奥様は『あぁさっきの新聞屋さんね、妹どうだった?』とおっしゃいます。私が『すみませんせっかくご紹介いただいたのにご不在でした』というと、奥様は『あっさきちゃん、カイロとってー、あっ、ありがとう』と娘さんからカイロを受け取りもみながら『そう、それで?』と完全に他人事のように私の話を聞いています。
私はダメもとで『奥様、重ね重ね申し訳ないのですが、何とか短い期間だけお願いできないでしょうか?』と再度お願いしてみました。奥様は『うーん、でも新聞読まないしなー、、、今配達されている新聞も営業に人がポストだけ貸してくれって言うから入れているだけなのよー』とおっしゃいます。私は『そうですよね、今日は全体の数字も悪く自分こう見えてもリーダーなので帰るに帰れないんです』と食い下がり、『勝手な都合で申し訳ございません、何とか一度だけお付き合いいただけないでしょうか?』と必死にお願いしました。

すると奥様は『うーん』と言いながら『はいっ、温まったよ』と何かを私のほうに差し出したのです。見るとそれは先ほどから奥様がもんでいたカイロだったのです。『うふふ、あったかいよ』と奥様。私が『まさか私のために!!ありがとうございます!めちゃくちゃうれしいです!』と感激していると飯島直子さんに似たきれいなその奥様は『今日は寒いからね』と優しく微笑んでくれるではありませんか。あまりの優しさに危うく仕事を忘れてしまいそうになりながらも私は気持ちを整えおそるおそる『奥様、、、それで、、、新聞のほうは、、、』と聞いてみました。すると奥様は『ふふ、いいわよ。帰れないんでしょ?もう分かったから』と了解してくださいました。私は飛び上がらんばかりの勢いで『ありがとうございます』とお辞儀をし、無事ご契約を頂くことが出来ました。

さんざん無理を言ったにもかかわらず、私に優しくしていただいた奥様。
そしていつまでも寒空の中見送ってくださるかわいらしい奥様に、なぜか自分の周りだけ春になったかのように心が温かくなった、そんなまだ寒さの真っ只中の2月20日、締め切りの一日でした。

PS、この仕事やってきてよかったー!

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