レジェンドストーリー

STORY.42
2013年下半期レジェンドストーリー金賞S.S
平成25年12月度 ASA早大前

その日は、あらかじめ朝日新聞のお試し読みをして頂いているお客様を訪問し、ご購読のご案内をする仕事の日でした。
あるお宅でのことです。私がインターフォンでお試し読みのお礼とご挨拶と言うことをお伝えすると、すぐに玄関口まで出てきていただきましたが、奥様はすぐに「取れなくてごめんなさいね」とおっしゃいました。お話を伺うと、読売新聞が大好きで、ずっと取っているとのことでした。朝日新聞は嫌いではないけれど、新聞を替えるのは嫌だとおっしゃいます。しかし、私は諦めずに、今回のお試し読みキャンペーンの趣旨や、来年朝日新聞が135周年を迎えること、そして、奥様のご家庭のこと、自分の子供が専門学校に通っている話など、いろいろなお話をさせていただきました。そして、いずれそのうち、短い期間だけでもいかがでしょうか、とお願いしました。
すると奥様は、朝日新聞に変えることが出来ない本当の理由を、ぽつり、ぽつりと話し始めました。ご主人は目が悪く、「新聞はもうやめる」と2,3日前にも言っていたし、今後どうするかわからないと言うこと。ご主人は病気で、今は何か状況が変わるとすぐにパニック状態になってしまうから、勝手に取るわけにはいかないと言うことなどをお話になり、「もうすぐお風呂から出てきてしまうから、もう戻らないと」「出て来たときに私がいないと、またパニックになってしまうといけないから、、、」とおっしゃいました。

私は次の瞬間、朝日新聞をお勧めすることを断念しました。
その言葉から、奥様の日ごろのご苦労がひしひしと伝わってくるようで、これ以上よけいなご心労をおかけする気持ちにはなれなかったのです。

私は、「奥様、ご無理を言って申し訳ありませんでした。これで失礼させていただきますが、よろしかったらこちら、お使いください。」と私はある物をお渡ししました。すると奥様は「何かしら?」と不思議そうなお顔をされていましので、「これは新聞レンズと言いまして、大きい虫眼鏡のようなものなのですが、目の悪い方が新聞を読みやすくなるように、本社の社員さんが作ったものです。ご主人のお役に立つと思います。」と申し上げました。
奥様は「あら、取らないのに悪いからいいわよ」とおっしゃいます。
私は「いえ遠慮なさらずに、うちの家内の母にも勧めて、使っているんですが、とても新聞が読みやすくなったと喜んでいましたので、きっと使いやすいと思います。どうぞお使いになってください。今回、ご縁をいただけなかったのは残念ですが、またいづれの機会に朝日新聞をよろしくお願いします。」と申し上げました。すると奥様は「わかりました、ありがとう、本当に契約できなくてごめんなさいね」とおっしゃいます。私は「では、ご主人様にもよろしくお伝えください。今回はお試し読みありがとうございました。」と申し上げ、そのお宅を後にしました。

その夜仕事を終え帰店した私は、いつものように営業日報の作成など、退店の準備をしていると、お店の方に「お客さんから電話があったよ」と言われました。
聞いてみると、先ほどの奥様から電話があり、昼間は断ってしまったが、ご主人に今日の話をしたところ、是非その営業さんから取りたいから、何とか明日来てもらえないか、と言う内容でした。

翌日、あらためてそのお宅を訪問すると、奥様が出てこられて
「主人がね、是非その人から取ってあげなさい、それから新聞レンズはとても見やすい、ありがとう、そう伝えておいてくれ、、と言っていたわ。何度も足を運んでいただいて悪かったわね、でも契約出来てよかったわ、昨日は断ってごめんなさいね」とおっしゃっていただき無事、ご契約をいただく事ができました。

そして帰り際「お子さんにも頑張って!と伝えてね。実はね、私もその専門学校出身なのよ」とお言葉をいただきました。
私は「そうだったんですか!ありがとうございます。うれしいです。では一年間よろしくお願いします。」といい、そのお宅を後にしました。

なんというかとてもやわらかい気持ちになれた、一件のご契約でした。

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